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マンション経営を行うオーナーにとって、為替相場の変動は意外に身近な問題です。特に円高が進行すると、建築資材や設備の調達コストが下がる一方で、外国人投資家の購買意欲や資産評価に影響を与え、不動産収益に思わぬ変化をもたらします。本記事では、「円高とは何か」をおさらいしたうえで、マンション経営における具体的なメリット・デメリットを整理し、オーナーとしてできる対策ご紹介します。
「円高」とは、外国通貨に対して日本円の価値が相対的に「高く」なる状態を指します。例えば、「1ドル=150円」だったレートが「1ドル=120円」へ動けば、同じ1ドルを仕入れるのに必要な円が30円減ります。これを“円が高い”と表現するのです。
円の価値が相対的に高まるため、輸入品や海外サービスをより安く手に入れられる反面、輸出企業やインバウンド需要には逆風となります。マンション経営においても、建築資材の調達費用、外国人入居者や投資家の動向、資産評価など多方面に影響が及びます。
円高には建築コストの低減や設備調達の優位性など、マンション経営者にとって嬉しい側面がいくつもあります。
鉄筋やアルミサッシ、HVAC(空調設備)など多くの建築資材は輸入に頼っています。為替レートが10円円高になるだけで、輸入価格は約10%減。例えば、数千万円規模の新築プロジェクトなら数百万円以上のコスト削減につながります。リノベーションや共用部の改修工事を計画している場合、円高局面でまとめて発注すると、大きな経費節減が期待できるでしょう。
給湯器やエレベーター部品、セキュリティ機器なども多くは海外からの輸入品。円高になると交換部材や定期点検時の部品調達コストが約5~15%安くなる場合があります。長期的な維持管理コストを抑えることで、運営キャッシュフローの改善にもつながります。
円高局面では日銀の金融政策変更が起こりやすく、長期金利が低下しがちです。住宅ローンや投資ローンの金利が0.1~0.2%低下するだけでも、1億円借入時の年間利息負担が数十万円軽減されます。追加借り入れやリファイナンスを検討する際には、円高の動きを見ながら最適なタイミングを狙いましょう。
1ドルあたりの円の価値が上がると、ドル建てで資金を保有する海外投資家にとっては日本不動産が割安に映ります。都心部のタワーマンションやホテルレジデンスなど、インバウンド需要を狙った物件には買い手が増え、成約までの期間が短縮されるケースもあります。販売フェーズを迎えるオーナーにとっては、大きな追い風となります。
円高は入居者募集や運営面でデメリットをもたらすこともあります。
外国人旅行者や長期滞在者の旅行コストは、円高が進むほど上昇します。民泊やサービスアパートメントの稼働率が10~20%程度低下した例も報告されており、短期賃貸を主力とする物件は稼働率の落ち込みに注意が必要です。
自動車メーカーや電子機器メーカーなど、輸出企業は円高が進むと製造コストが上がり、海外出張や駐在員の人数を抑制する傾向があります。オフィス併設レジデンスや社宅としての需要が減ると、空室率が上昇し賃料下落圧力がかかります。
海外子会社や外貨建ての不動産投資信託(REIT)など、国外資産を円換算する際に評価額が目減りします。為替差損としてバランスシート上の資産評価が縮小し、金融機関からの評価にも影響を与える可能性があります。
海外投資を組み込んだ収益モデルでは、為替差益を見込んでいた場合、円高が長期化すると想定利回りを大きく下回ることがあります。キャッシュフロー予測や税務上の損益計算にも影響が及ぶため、早期にシナリオを見直す必要があります。
円高時でも安定的かつ収益を確保するための対策を検討しましょう。
外貨建て預金や為替ヘッジ付き投資信託を組み合わせ、ドル円変動リスクを相殺します。資産の一部をヘッジしておくことで、円高による目減りを防ぎやすくなりますし、レバレッジを抑えた安定運用が可能になります。
民泊や短期賃貸物件では、ドル建てやユーロ建ての賃料プランを設定し、為替変動に合わせて賃料を見直せる「変動賃料制」を導入します。宿泊プラットフォームとの提携で、予約状況に応じてリアルタイムに賃料を調整すれば、収益機会を逃しにくくなります。
定期点検・メンテナンス用の部品調達は、日本円建てで調達できる国産メーカーやアジア近隣諸国の代替サプライヤーへシフトするとリスク分散に。さらに長期契約を結び、価格変動リスクを一定期間固定する方法も有効です。複数社との見積比較を定期的に実施しましょう。
将来的な売却や再投資を想定し、為替変動リスクを含めた収支シミュレーションを複数パターンで作成。円高・円安双方のシナリオを想定し、最適な売却時期や資産組み換えタイミングをあらかじめ検討しておくと、急な相場変動にも慌てず対応できます。
円高は建築資材や設備調達のコストダウン、融資条件の緩和、海外投資家の呼び込みといったメリットがある一方、インバウンド需要の減少や外貨建て資産評価の下落など、多面的なデメリットも抱えています。
マンション経営者・オーナーは、為替ヘッジや賃料設定の工夫、調達ルートの多様化、出口戦略のシナリオ設計など、リスク分散策をあらかじめ整えておくことが大切です。円相場の変動を無視せず、安定したキャッシュフローと長期的な収益性の確保を目指しましょう。
また、マンション経営においては、すべてのリスクを一人で管理するのは慣れていなければ難しいもの。不動産や金融、税務、法律といった各分野の専門家との連携を強化することが不可欠です。
定期的な専門家からのアドバイスを受けたり、市場の動向を把握したり、経営戦略を見直したりすることで、常に最新の情報をもとにした的確な判断が可能となるでしょう。
1975年設立。総合建設会社として、RC工法を標準化したマンション建築、無料の24時間体制の賃貸管理、「お部屋探しのテクトピア」での入居サポートなど、建設から管理までトータルでサポート。