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マンション経営の赤字の原因や対策とは?

   

本記事では、マンション経営における会計上・キャッシュフロー上の赤字の違いや、赤字に陥る原因とその改善策を実例を交えて詳しく解説します。

会計上の赤字と実質的キャッシュフローの赤字の違いがある

マンション経営では、帳簿上の収支がマイナスになる「会計上の赤字」と、実際に手元の現金が足りなくなる「実質的なキャッシュフローの赤字」があります。

会計上の赤字は主に減価償却費が大きく計上されることで生じます。建物部分は耐用年数に応じて毎年経費化されるため、手元の家賃収入がプラスでも帳簿上は赤字になる例が少なくありません。この赤字は所得税や住民税を節税するメリットとして活用が可能です。

一方、家賃収入からローン返済、管理費、修繕積立金などの支出を差し引いた結果、毎月の手残りがマイナスになるケースが「実質的なキャッシュフローの赤字」です。これは実際に手元資金が不足し、自己資金で補填しなければならない状態を指し、資金繰りが厳しくなる大きなリスクです。

会計上の赤字は節税手段、キャッシュフローの赤字は経営危機と捉え、両者を明確に区別しておくことが重要です。

マンション経営で赤字になる理由

空室・低家賃による収入不足

近年、都心部でも繁忙期以外の空室率が高止まりしています。2025年1月時点では、東京都心5区でも空室率の改善傾向が見られるものの、郊外や地方都市では依然として賃料を下げざるを得ない状況が続いています。

物件の設備や間取りが古いままだと入居希望者が集まりにくく、家賃を下げても満室に届かず、本来見込んでいた賃料収入を確保できないケースが増えています。築年数が経過した物件や駅から遠い物件では入居希望者が少なく、想定よりも20~30%低い賃料設定を余儀なくされることも珍しくありません。

※参照元:日本情報クリエイト(全国主要地域賃貸市場動向:CRIX指標を活用した最新のエリア別分析

ローン返済・利子負担の重さ

2024年以降、日本銀行の金融政策が引き締め方向に転じ、実質金利は上昇傾向にあります。2025年時点では住宅ローン金利が1%前後に達しており、借入額が大きいほど利息負担は増大します。

特に変動金利ローンを選んだ場合、金利変動リスクによって返済額が想定以上に膨らむ可能性があります。返済計画を甘く見積もり、家賃収入だけで利息分をカバーできないと、月々のキャッシュフローはマイナスに傾いてしまいます。

慎重にシミュレーションを行いましょう。

管理費・修繕積立金などの支出負担増加

マンション所有者は管理組合に管理費や修繕積立金を納める必要があります。特に修繕積立金は大規模修繕に備えるための費用で、築20年以上になると一度に大きな金額を徴収される場合があります。

管理会社によって管理費の相場は異なり、近年は人件費や資材高騰を理由に手数料率を引き上げる管理会社も多いです。その結果、以前の見積もりで運営しているオーナーは思わぬ支出増加に直面し、毎月のキャッシュフローを圧迫されるリスクがあります。

税金・手数料など想定外のコスト

不動産を所有すると、固定資産税や都市計画税が毎年、物件の評価額に応じて見直されます。首都圏を中心に地価が上昇しているエリアでは評価額が増加し、納税額も大幅に膨らむ傾向があります。

また、仲介手数料や更新料、保証会社利用料といった諸経費も年々上昇傾向にあります。保証会社利用料は一般的に賃料の1か月分が相場であり、家賃を下げても保証料が固定されるため、コスト計算において見落としやすい要素です。これら想定外の支出を考慮せずに収支計画を立てると、赤字に陥る可能性が高くなります。

赤字に陥った事例と共通課題

リサーチ不足で立地・物件選びを誤ったケース

赤字に陥るオーナーの多くは、購入前に地域の人口動態や将来の需要を十分に調査していません。例えば、地方都市の郊外で人口減少が進むエリアを見落とし、駅から徒歩30分以上離れた築25年以上の物件を購入したケースでは、周辺に商業施設や病院などの利便施設が不足しており、単身者・ファミリーどちらも入居が伸びませんでした。結局、想定していた家賃より20~30%低く設定せざるを得ず、そのまま長期間空室が続き、収支が大幅に悪化しました。

入居者募集対策の失敗と空室長期化

立地条件自体は悪くなくても、広告戦略が時代に合っていないと空室が長引きます。紙媒体のチラシや古いポータルサイトのみで募集を行い、SNSやスマートフォン対応のウェブ広告を活用しなかった物件は、とくに若年層に訴求できず、募集期間が延びて空室損失が拡大しました。

2025年の繁忙期では、インターネット広告を効果的に活用した物件の成約件数が増加し、スマホ対応の情報発信を行った物件では成約賃料が前年同期比で2万円ほど上昇した事例もあります。広告費を節約しすぎて募集方法をケチると、結局空室期間が長引き、家賃収入の機会損失を招きます。

入居者トラブル発生による追加コスト

入居者トラブルは見落とされがちですが、原状回復費や滞納対応にかかるコストが大きな負担になります。例えば、退去時に壁紙貼り替えやフローリング修繕で100万円近くかかったケースがあります。また、家賃滞納が発生した場合、保証会社を利用して賃料回収しても、遅延損害金や弁護士費用などの追加費用が出ることがあります。

さらに2025年以降、賃貸住宅管理業法の改正によって入居者支援や高齢者対応の要件が強化され、管理会社への依頼費用が上がる可能性もあります。

こうしたトラブル対応コストを見積もらずに収支計画を立てると、想定外の支出で赤字を招く原因になります。

サブリース契約トラブルの実例

サブリース契約では、賃料保証を受ける代わりに管理会社や業者に手数料を支払いますが、契約更新時に保証賃料が引き下げられるリスクがあります。2025年に顕著化した「サブリース2025年問題」では、多くのオーナーが契約更新時に市場家賃より低い保証賃料を提示され、キャッシュフローが想定以上に悪化しました。

さらに、サブリース会社の倒産や保証賃料の不払いリスクもあり、過度に依存したオーナーは入金が途絶え、巨額の債務だけが残る事態に陥ることがあります。

売却タイミングを誤った失敗例

売却タイミングの誤りは赤字を拡大させる大きな要因です。2014~2023年の間は中古マンション価格が上昇傾向でしたが、2025年には地価上昇が一巡し、一部地域では価格が下落に転じる兆しが見え始めました。

そのような状況にもかかわらず、オーナーが築古化を理由に焦って売却した結果、相場下落局面で売ることになり、ローン残債よりも物件価値が下回る逆ざや状態に陥ったケースが多くあります。築10年以上の物件を「まだ売れる」と楽観視したオーナーは、買い手がつかず保有し続け、その間にかかる修繕費・管理費・税金が積み重なって売却時にはさらに価値が下がる結果となりました。

赤字を防ぐ・改善するための対策とは?

物件・土地選びを考える

赤字を回避するには、購入前の物件選定が非常に重要です。まず、賃貸の需要を見極めるために地域の人口動向や再開発計画などの情報を確認しましょう。都心部では価格水準が高いエリアがある一方、周辺の郊外では供給過多ぎみな傾向が見受けられます。駅から程よい距離にあり、周辺に商業施設や教育施設が整っているエリアを選ぶと安定した需要が期待できます。

次に、築年数や構造をチェックリスト化し、耐久性のあるRC造・SRC造などの物件を優先しましょう。こうした物件は将来的な修繕リスクを比較的軽減できることが多いです。また、エリアごとのターゲット層(単身者向けかファミリー向けか)を把握し、間取りや専有面積が需要に合っているかを検討します。たとえば、単身者向けではワンルームや1K程度、ファミリー向けでは2LDK以上の間取りが概ね人気を集めやすい傾向があります。

ファイナンス計画の見直し

キャッシュフロー赤字を防ぐうえで、ローン返済計画のバランス感覚が欠かせません。まず、固定金利と変動金利それぞれのリスク・メリットを比較し、将来の金利変動に備えて余裕を持ったシミュレーションを行いましょう。金利は長期的に上昇する可能性があるため、返済負担率が適度に抑えられる借入額を検討することが大切です。

また、低金利のローンへ借り換えを検討する際には、借り換え手数料や諸経費といった初期コストを含めた総コストをしっかり試算し、返済期間を延長した場合の利息総額と比較検討しましょう。金融機関が提供するシミュレーターなどを活用して、複数パターンを比較することが有効です。

空室対策と賃料設定の最適化

空室を早期に埋めるには、まず賃料設定を適切に行うことが欠かせません。インターネットの賃貸情報サイトを活用し、同じエリア・間取り・築年数の競合物件の家賃相場を定期的にチェックすると良いでしょう。そのうえで、市場価格をやや下回る賃料を設定すると、空室期間の短縮につながるケースが少なくありません。

また、物件の魅力を高めるリノベーションや小規模リフォームも効果的です。たとえば、古いユニットバスを最新の設備に入れ替えたり、キッチンをIHクッキングヒーターに更新するなどの工夫で、入居希望者からの問い合わせが増える傾向があります。近年の繁忙期では、こうした設備投資を行った物件の賃料設定に好影響が出ることが多く、リフォーム費用に対する投資対効果が高いケースも散見されています。

さらに、SNS広告や動画内覧を活用し、スマートフォン対応の情報発信を行うことで、若年層をはじめとした幅広い入居希望者にアピールしやすくなるでしょう。

管理コスト・修繕費の最適化

管理費や修繕積立金の負担は、管理会社によって手数料率が異なります。近年、人件費や材料費の上昇を背景に手数料率を引き上げている会社もあるため、複数社から相見積もりを取り、手数料率やサービス内容を比較するようにしましょう。その結果、年間で一定のコスト削減が見込める場合があります。

また、長期修繕計画を立て、建物の躯体や外壁、給排水管の交換時期などを10年程度のスパンで計画的に検討することで、積立金の不足による一時徴収リスクを回避し、キャッシュフローを安定させることができます。さらに、火災保険や地震保険、賃料保証保険などの保険商品についても、複数のプランを比較検討し、コストパフォーマンスの高いものを選ぶことで、万一のリスクに備えられます。

税務の活用と節税戦略

マンション経営では、減価償却による節税効果を適切に活用することが重要です。建物部分の取得価格を耐用年数で按分して経費計上し、帳簿上の赤字を作り出すことで、所得税や住民税の軽減につなげられます。ただし、税制は改正の動きがあるため、最新情報を定期的にチェックし、法改正の内容を踏まえて節税対策を組み立てるようにしましょう。

また、法人化による節税効果にも注目したいところです。法人税率が個人の所得税率よりも低い場合、法人を設立して不動産を所有することで税負担を抑えられるケースがあります。ただし、法人設立に伴う登録費用や維持費、会計事務所への依頼料なども発生しますので、これらを含めたトータルコストを比較検討し、税理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談したうえで最適な戦略を立てることをおすすめします。

まとめ

マンション経営で赤字を防ぐには「帳簿上の赤字」と「手元資金の赤字」を区別し、空室対策・適正な賃料設定・ローン返済計画の見直し・管理コストや修繕費の最適化・節税戦略の実行といったポイントをバランスよく実践することが重要です。

購入前のリサーチ不足や広告戦略、入居者トラブル、サブリース契約、売却タイミングの失敗といったリスク要因を事前に把握し、専門家の意見も取り入れながら対策を講じることで、長期的に安定した収益を確保できます。定期的に経営状況を見直し、適切な改善策を実行し続けることで、マンション経営の健全化を目指しましょう。

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1975年設立。総合建設会社として、RC工法を標準化したマンション建築、無料の24時間体制の賃貸管理、「お部屋探しのテクトピア」での入居サポートなど、建設から管理までトータルでサポート。

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